事務管理

問題

A会社の工場が爆発し、附近を通行中のBが重傷を負い、通行人CがタクシーでBを医師Dのもとに運んだ。Bは、治療のかいもなく、間もなく死亡し、あとに、長期間別居中の妻E、内縁の妻F及びB・F間の子でBにより認知された幼児Gが残された。

 右の事実関係の下において、次の問いに答えよ。

Cがタクシー料金及び汚れた衣服のクリーニング料金を支出した場合におけるその費用並びにDの治療代に関し、C及びDは、だれに対してどのような請求をすることができるか。CがBに依頼されることなく自分の判断でBを搬送し、B名義でDに対して治療の依頼をした場合に限定して答えなさい。

(旧司法試験昭和58年民法第2問改題)


小問

事務管理に該当するためには、本人の意思や利益に反していないこと(民法698条)が必要です。本件で、Bは意思表示ができない状態でしたが、Cの行為が「本人の意思に反していた」と評価されるおそれはないでしょうか。

対応する模範解答の部分

「本人(この場合はB)の意思や利益に明らかに反していないこと(698条)」

解答のヒント
小問

搬送時にCの衣服が汚れたため、クリーニング費用がかかっています。この費用についても、事務管理に基づく返還請求が認められるでしょうか。どのような点が問題となりますか。

対応する模範解答の部分:
「クリーニング費用も、搬送に通常伴う支出として、有益な費用に含まれると解される。」

解答のヒント
小問

DはCの依頼によりBを治療しました。DがBまたはその相続人に対して治療費を請求するには、どのような条件が必要ですか。代理法理との関係から考えてください。

対応する模範解答の部分:
「CはBの代理人ではなく、無権代理であるため、追認がなければBには効果が帰属しない。」

解答のヒント
小問

Fが無権代理行為を追認しなかった場合、Dはどのような法的請求をすることができますか。根拠条文とともに説明してください。

対応する模範解答の部分:
「追認がなければ、Dは無権代理人Cに対して履行または損害賠償を請求することができる(117条1項)。」

解答のヒント
小問

Cが行った搬送行為が事務管理にあたる場合、Cの返還請求の相手は誰になりますか。また、その法的根拠もあわせて説明してください。

対応する模範解答の部分:
「CはBの相続人であるE・Gに対して、有益な費用の返還を請求できる(702条1項、896条)。」

解答のヒント
小問

事務管理において「有益な費用」とされるか否かの判断基準は何ですか。搬送に伴うクリーニング代もこれに含まれる理由を、法的根拠とともに説明してください。

対応する模範解答の部分:
「通常予見される支出であり、管理行為に付随するものであるから、有益な費用と評価できる。」

解答のヒント
小問

Cの依頼によりDがBを治療した場合、Cに代理権がないとすると、DがBに対して治療費を請求するにはどのような条件が必要ですか?

対応する模範解答の部分:
「Cは無権代理人であるため、Fが追認しない限り、DはB(の相続人)に請求できない。」

解答のヒント
小問

追認がなされなかった場合、Dは誰に対して治療費を請求できますか。また、その法的根拠と請求の種類も説明してください。

対応する模範解答の部分:
「Dは無権代理人であるCに対して、履行または損害賠償の請求ができる(117条1項)。」

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