抵当権の効力、返還請求
抵当権
関連条文
(抵当権)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を継続している不動産について、その占有を妨げないで、これを担保にして、債権の弁済を受けることができる。
(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第三百七十条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物(以下「付加一体物」という。)にも、その効力を及ぼす。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消権を行使することができる場合は、この限りでない。
被担保債権と付従性
・付従性とは?
抵当権は被担保債権に従属し、債権が消滅すれば抵当権も消滅する。
抵当権の効力の及ぶ範囲(付加一体物)
抵当権は、抵当不動産に付加して一体となっている物(付加一体物)にも効力が及びます(370条本文)。
判断要素(付加一体物となるか)
① 付合物
② 従物
③ 従たる権利(借地権など)
分離後の効力と第三者への対抗
分離された付加一体物(たとえば庭石を運び出して売却)について、抵当権を主張するには相手方が第三者に該当するか否かが問題となります。
原則:登記による対抗が必要(177条)
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、…その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
▷ 具体例
抵当権が設定されている土地から庭石を運び出し、善意のDに売却
→ 登記は庭石に及ばず、Dが「第三者」であれば抵当権を対抗できない
例外:背信的悪意者には対抗可能
→ 分離物を取得した相手が、抵当権の存在を知りつつ、不当な目的(信義則違反)で取得した場合
→ その者(背信的悪意者)は「第三者」ではないとされ、抵当権の効力を主張可能
抵当権に基づく請求権(妨害排除と引渡)
原則:妨害排除請求のみ(296条)
(妨害排除請求)
第二百九十六条 所有者は、自己の所有権を妨害する者に対し、その妨害の排除を請求することができる。
→ 抵当権も物権の一種であるため、妨害排除の請求が認められる。
例外:引渡請求が認められる場合
- 抵当権設定者が管理を怠り、著しく交換価値が損なわれるおそれがあるとき
- 例:反社会的勢力に貸し出された建物 → 競売が著しく困難に